東京大学の学生が、科学の不思議さやおもしろさを子どもたちなどに伝える活動をしています。「東京大学CAST」のみなさんです。
CASTは、“CommunicAtors of Science&Technology”の略で、「科学と技術を伝える人たち」という意味です。CASTは2009年に活動を始めてから、たくさんの実験教室やサイエンスショーなどを行ってきました。そんなCASTからメンバー3人に集まってもらい、科学が好きになったきっかけや、これまでの勉強法、将来の夢などを聞きました。
きっとこれからの勉強や日々の過ごし方の参考になるはずです。
- 小学生のときから算数が好きでしたし、「元素図鑑」を読むのも好きでした。そのころは「こんなに近い元素なのに、ぜんぜん性質がちがうんだ!」っていう不思議さを単純におもしろがってたんですが、高校生になって「化学」をしっかり学ぶようになって、いろんなものが持っている性質やその使われ方に興味を持つようになりました。その体験がもとになって、化学を勉強する学科に入ったんです。
- 私は小さいころ公文式に通って国語と算数を勉強していたんですが、そこで「あ、私って国語より算数の方が好きだ!」って気づいたんですよね。また、私の通っていた小学校には、少人数の生徒を集めて算数の授業だけをしてくださる先生がいたんです。その先生の授業が、すごくおもしろかったんです。そこでよりいっそう算数が好きになりましたね。
それと、私、東野圭吾さんの小説が大好きなんです。「ガリレオ」シリーズに出てくる「湯川先生」って、めちゃくちゃカッコいいじゃないですか※1。それも科学が好きになった理由ですね。
- ぼくは、小学生のころからなんとなく理科は好きだったんですが、はっきりと科学に興味を持つきっかけになったのは、地元の北海道旭川市で開かれていた科学実験教室に参加したことでした。そのときに「身の回りのものはすべて、“原子”っていう目に見えないほど小さい粒でできているんだ」ということを初めて知って、ものすごくおどろいたんです。
「どんなものも、小さい粒でできていて、その粒について考えることが、身の回りで起きている現象を理解することにもつながるんだ」と、その実験教室で気づいたことが、科学を本当に好きになった最初の思い出ですね。
今CASTで、いろんな実験を多くの人に楽しんでもらう活動を行っていますが、あの時実験教室で科学に感動した経験が原動力になっています。
- 大学受験の年に、東大の学園祭に行ったんです。いろんなブースや出し物があったんですが、ぼくの知的好奇心をくすぐってくれるような、学術的な発表がたくさんあったんです。それを見て「東大って、おもしろいことやってるなあ!」って感じたんです。たぶん、これが東大を選んだ最初のきっかけですかね。
- 私は、高校2年生くらいまで、どこの大学に行くか全然考えてなかったんです。それで担任の先生に「実は大学どこ受けるかまだ決めてないんですよね」って相談したら、「じゃあ、東大目指せばいいんじゃない? 東大目指しておけばどこの大学でも行けるでしょ」ってすすめられたんですよ。それで今東大にいるんです。こういう人、けっこう多いと思いますよ。
- 高校に入ったばかりのころは「東大なんて雲の上の存在だなあ」と思っていたんですが、高校1年生の夏に東大のオープンキャンパスに参加したとき「この大学に入ってみたい! ひょっとしたら自分も目指せるかも!」と感じたんです。それで、いろいろ東大の入試の方法について調べていたら、自分が目指す理学部化学科に推薦入試があることを知りました。その後、「化学グランプリ※2」での入賞経験などが評価されて推薦を受けられることになり、東大に入ることができました。
- 実はぼく、家であんまり勉強できないタイプなんですよ。自分でそれを理解していたので、塾の自習室など、外で勉強するようにしていましたね。また、塾には友達がたくさんいたので、はげまし合いながら勉強していました。「自分に合った環境で勉強する」ことと、「友達と高め合いながらがんばる」ことが、自分を支えてくれたと思います。
- 私は高校の先生にすごく恵まれたんです。「塾に行かなくても、学校の勉強だけで大学に行けるように指導してあげる」と先生方がおっしゃってくださったので、わからないところなどを見ていただきながら、学校の自習室で朝早くから学校が閉まるまで勉強していましたね。自習室には、私の特等席があったんですよ。窓際の一番後ろの席を独占して、自分が勉強に集中できる環境を整えました。
- ぼくは、自分がおもしろいと思うことは積極的にできるんですが、そうでないことはなかなか気分が乗らないタイプの人間だったので、興味がない分野の勉強はなかなか苦労しました。だから「授業の内容だけは完璧にしよう」ということを心がけていました。授業はイヤでも参加しなければならないので、そこで教わったことを完璧にすれば、なんとかなるんじゃないかな、という気持ちでがんばっていましたね。
- 授業を聞いているときに、「何がわからないのか」をちゃんと整理できていると、その後の勉強にも生かせるのかと思います。ただ「うーん、わかんない」という状態だと、何がわからないかもわからないから、先に進めませんよね。でも「ここがわからない」という部分がはっきりしていれば、先生にも聞きに行けるし、自分でも調べることができるので、まずは学校の授業で「何がわからないのか」を見つけることから始めるのがよいのではないでしょうか。
- まずは大学院に進んで、もっと化学の勉強を続けようと思います。今勉強しているのが「新しい薬の原料になる物質を探す」という内容なので、将来は薬を作ったりする仕事につければいいなと考えています。
- 私もまずは大学院に進学したいですね。その先はまだ何も決めていないのですが、いろんな分野を幅広く勉強して、その中から「これは楽しそうだな!」と感じられるような分野を見つけたいなと思っています。
- ぼくは3年生から理学部化学科に進む予定なんですが、卒業後は大学院の博士課程まで進んで、研究者になりたいと考えています。研究以外にも、今CASTで行っているような、サイエンスコミュニケーション活動もつづけていきたいと思っています。
- 理科にかぎらず、小さいときから「自分はこれが好きだ! この道に進みたい!」って心に決めている人はあまりいないと思うんです。だいたいみんなそうなんですよね。ぼくも昔はそうでした。でも、なんとなく「これっておもしろそうだな」と思うものって、きっとあるはずなんです。それを見つけて、勉強を深めていくと、将来の道につながるかも知れません。まずは「これ、おもしろそう」を探してみましょう!
- 私が最初に科学を好きになったのも、「東野圭吾さんの本、おもしろい!」という、ほんの少しのきっかけでした。そんなところからスタートした科学の道が、大学生の今も続いています。そんな、ちょっとしたきっかけをどうか大事にしてほしいなと思います。科学はまだまだ研究が進んでいない分野もありますし、新しい発見もこれからたくさんあると思うので、誰も見たことがない世界に飛び込んでみたい人は、ぜひ科学の道に進んでみてください。
- 科学に大切なのは「なんでだろう」という問いです。化学実験だけでなく、なんでもそうですが、何かが起こった時に、「これはどうして起こったんだろう」といろんな角度からしっかり考えると、真実が見えてきます。「なぜ」を考えぬいて、真実にたどり着こうとすることこそが、「科学」だと僕は思っています。そして、たくさんのものに出会って「なんでだろう」と考えて、さらに、ほかのものとも結びつけて、また「なんでだろう」と考えぬくと、自分の世界がどんどん広がっていきます。どんなときも「なんでだろう」と考える心を持ちつづけてください。
- ※1:天才物理学者の湯川学が、科学の知識で難事件を解決していく推理小説シリーズ。ドラマにもなったから観たことある人も多いかも?
- ※2:別名「化学の甲子園」。日本全国の中学生・高校生が化学の実力を競い合う全国規模の大会。みんなも目指してみよう!